2016年7月26日火曜日

安全に手術を行うための確認事項

「手術部位の左右を間違えて摘出してしまった」
「違う患者さんに手術を行ってしまった」

このような報道が、テレビなどでたまに見られます。このような手術部位間違いや患者間違いは、日本国内ではあまり多くはありません。ところが、海外ではびっくりするくらいたくさん起こっています。患者さんからしてみれば、「何でそんなことが起こるのか理解できない」と思われる方もいらっしゃると思います。このような間違いは、実際に起こりうることです。自分自信、働いていてそう思います。このようなあってはならない事故を防ぐために、様々な対策を立てて手術に臨んでいます。

なぜ患者間違いや手術部位間違いが起こるのか

このような事故が起こる原因は様々ですが、特徴的なものを挙げてみます。
  • 手術件数の増加
近年、麻酔方法や麻酔薬が進歩しており、ハイリスクな手術も行えるようになりました。また、内視鏡手術やロボット手術など、患者さんに負担の少ない手術ができるようになり、今まで手術できなかった患者さんも、手術を行えるようになりました。
  • 患者さん本人に、本人確認や手術部位の確認を行えない場合がある
最も確実な事故防止方法は、患者さんご本人に名前や手術部位を言っていただくことです。近年では高齢で認知機能が低下している方にも、必要であれば積極的に手術が行われます。患者さん側の要因で間違いが起こりやすいということではなく、よりレベルの高い確認が必要であり、相対的に見て間違いが起こりやすいということです。
  • スタッフの疲労
夜勤などの夜間業務は、少なからずスタッフの疲労になります。手術件数増加などの要因も加わり、疲労の多い状況では間違いが起こりやすくなります。

    手術室で間違いが起こることの恐さ

    • 本来必要な手術ではなく、必要のない手術をおこなってしまった
    • 右側の癌を摘出するはずが、関係ない左側を摘出してしまった
    どれも、起こってはならない致命的なミスです。手術は体にメスを入れて治療を行うため、このようなミスはあってはなりません。このようなミスが起こると、もう一度手術が必要になったり、傷が増えたり、患者さんにとって取り返しのつかない結果を招くこともあります。手術のような体に負担がかかる治療の場では、より慎重に事故防止を行う必要でがあります。

    手術室における事故防止への取り組み

    1. 手術部位のマーキング
    2. 手術安全チェックリスト

    1.手術部位のマーキング

    手術を行う部位、特に左右のある臓器などに対する手術の際には、油性マジックなどでマ
    ーキングすることが推奨されています。誰がいつマーキングを行うかは施設によって異な
    りますが、少なくとも患者さんの意識がある間に、医師をはじめとした医療者と患者さんが一緒に手術部位を確認し、マーキングする必要があります。

    2.手術安全チェックリスト

    安全に手術を行うための世界的な取り組みとして、WHO(世界保健機関)が推奨しているものです。具体的には、サインイン、タイムアウト、サインアウトの3つから構成されています。
    • サインイン
    手術室に入室し、麻酔をかける前に行います。患者さんの名前や生年月日、手術部位、マーキングが行われているかどうかなどを確認します。

    • タイムアウト
    麻酔をかけ、手術が始まる直前に行います。手術を担当するスタッフ全員が手を止め、患者さんの名前や生年月日、手術部位、手術内容に加え、予想手術時間や予想出血量などを確認します。

    • サインアウト
    手術が終わり、麻酔を覚ます前に行います。予定通りの手術が行われたかどうか、手術中にトラブルがなかったかどうかなどを確認します。

    手術室看護師として、患者さんにお願いしたいこと

    医療事故は起こしてはならないミスであり、特に手術室では命に関わる重大な事故になりかねません。僕たち看護師を含め、医療者全員があらゆる対策を講じて医療事故防止を行っています。ところが、医療者も人間であり、ミスが起こってしまうこともあります。医療事故をゼロにするためにも、ぜひ以下のようなことを、患者さんにもご協力頂きたいと思います。
    • しつこいくらい、事ある毎に、お名前や生年月日を確認させて下さい
    • 手術部位、特に左右がある場合は、その部位をしっかりと覚えておいて下さい
    • 手術までにマーキングが消えそうな場合は、看護師に声をかけてください
    これから先、手術件数はさらに増え、ハイリスクな手術もできるようになっていきます。安全に予定通りの手術を行い、早く社会復帰するためにも、ぜひご協力頂ければと思います。


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