2016年7月30日土曜日

脊髄くも膜下麻酔

脊髄くも膜下麻酔とは

脊髄の近くにある、くも膜下腔(くもまくかくう)という場所に局所麻酔薬を注入し、麻酔効果を得る方法です。一般的に、「下半身麻酔」とか、「半身麻酔」などと言われます。硬膜外麻酔と似ていますが、麻酔効果の発現が速いため、速やかに手術を行える反面、血圧低下などの循環器系合併症は起こりやすくなっています。硬膜外麻酔はカテーテルを留置することで麻酔時間を調節できますが、脊髄くも膜下麻酔はカテーテルを留置しません。一度麻酔薬を注入し、麻酔が切れる前に別の方法で痛み止めを行います。

硬膜外麻酔との違い

  • 麻酔作用の発現が速く、麻酔効果も強い
  • 血圧低下などの循環器系合併症が起こりやすい
  • 筋弛緩作用がある
脊髄くも膜下麻酔は硬膜外麻酔と似ていますが、明確な違いがあります。硬膜外麻酔は、硬膜外腔というスペースに局所麻酔を注入しますが、脊髄くも膜下麻酔はクモ膜下腔という、より脊髄神経に近い場所に麻酔薬を注入します。そのため、麻酔のかかっている範囲は、全身麻酔と同等レベルの麻酔効果になります。脊髄くも膜下麻酔は手術のための麻酔、硬膜外麻酔は術後の痛み止めのための麻酔として用いられることが多くなっています。

脊髄くも膜下麻酔が選択される手術

  • 下腹部より下の手術
  • 手術時間が2~3時間の手術
硬膜外麻酔は頭や顔面以外で用いられますが、脊髄くも膜下麻酔は下腹部より下の手術に限定されます。脊髄くも膜下麻酔が全身に効いてしまうと、全身麻酔と同じように呼吸が停止してしまうためです。

脊髄くも膜麻酔が行えない手術

  • 出血しやすい状態(血液がサラサラになる薬を飲んでいる場合など)
  • 重症の心臓病がある場合
  • 麻酔薬を注入するための針を刺す場所に、感染がある場合
  • 意思疎通がとれない場合(子供など)

脊髄くも膜下麻酔の合併症

  • 循環器系合併症(血圧低下や徐脈)
  • 呼吸抑制
  • 硬膜穿刺後頭痛
  • 神経損傷
  • 硬膜外膿瘍や血腫
  • 全脊髄くも膜下麻酔
全身麻酔とは違い麻酔効果は体の半分のみにとどまりますが、麻酔効果は強いため、血圧低下や徐脈が起こります。麻酔が予定よりも高い位置まで効いてしまうと、呼吸しづらくなることがあります。麻酔が全ての脊髄神経に効いてしまうと、全身麻酔と同じように呼吸が止まってしまいます。脊髄くも膜下麻酔では、このような合併症によって全身麻酔に移行せざるを得ない場合があります。
脊髄くも膜下麻酔は、硬膜という膜を貫いて、脳脊髄液という液体の中に麻酔薬を注入します。硬膜に空いた小さな穴から脳脊髄液が漏れると、術後1~2日で頭痛が起こると言われています。

脊髄くも膜下麻酔の方法

  1. 麻酔をかける前に、点滴を入れます。
  2. 右側、または左側を向いて横向きになります。
  3. 硬膜外麻酔と同じように、背中が丸くなるように膝を抱えます。
  4. 背中を触り、注射を行う部位を確かめます。通常は腰から注射をします。
  5. 背中を広く消毒します。
  6. 細い針を背中から刺し、脳脊髄液が逆流してくる位置を探します。
  7. 麻酔薬を注入します。
  8. 麻酔薬注入直後から血液が下がり始めるため、血圧を連続して計測します。血圧低下の度合いに応じて、点滴の速度を速めたり血圧を上げる薬を使用することがあります。
  9. 麻酔薬の注入が終わったら、針を抜きます。
  10. 足先が温かくなる感じや痺れるような感じがしたら、麻酔が効き始めている証です。
  11. 手術する部位まで麻酔を効かせるために、患者さんが寝ているベッドを傾けます。ベッドを傾けることで注入した麻酔薬が脳脊髄液の中を移動し、神経を遮断します。
  12. 麻酔が効いているかどうかを確認するために、冷たいものを体に当てます。麻酔が聞いている範囲は、冷たさを全く感じません。
  13. 手術部位に麻酔が効いたら、手術の準備を開始します。

まとめ

  • 脊髄くも膜麻酔は麻酔効果が強く発現も速いため、下腹部より下の手術を速やかに行うことができる
  • 全身麻酔ほど麻酔範囲は広くないが、血圧低下や徐脈が起こる
  • 麻酔が予定よりも高い位置(胸のあたり)まで効いてしまうと、呼吸がしづらくなる
  • 麻酔が高くなりすぎた場合、全身麻酔に移行する可能性がある


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