手術に麻酔が必要な理由
生体の防御機構
手術には、少なからず痛みを伴います。痛みというのは人間にとってとても大事な感覚です。例えば、ハサミで指を切ってしまったとしましょう。痛みを感じない場合、指が切れてしまったことに気づかない可能性があります。切れた指からは出血が続き、やがて生命の危機に陥るくらいの出血になってしまうかもしれません。
また、痛みを感じた時、人間は血圧が上昇します。その他、ステロイドホルモンが分泌されたりと、痛みを感じることで体の中では様々な変化が起こります。これらは全て、生体に危機的状況を知らせ、体を守るための反応です。この反応を、生体の防御機構と言ったりもします。
手術侵襲
ハサミで指を切ってしまうというようなケガと手術との違いは、意図的に体を傷つけるかどうかにあります。生体の防御機構は、生体を守るために起こります。ところが、意図的に体に傷をつける手術においては、この防御機構が有害となります。痛みで苦しみ、血圧がどんどん上がるような状況では、手術はできません。手術によって起こる生体の防御機構は、手術侵襲と呼ばれます。ケガの大きさによって痛みの程度も変わるように、手術侵襲も手術の種類や大きさによって異なります。
麻酔が必要な理由は、手術侵襲をコントロールすることにある
手術を安全かつ円滑に行うために、手術によって生じる痛みやその他の反応を制御しなければなりません。これが、手術において麻酔が必要な理由です。手術によって生じる痛みが我慢できる程度のものであれば、麻酔が必要ない場合もあります。
麻酔の基本
麻酔は痛みを取り除くだけでなく、手術する部位が動かないようにすることも必要です。痛みを取り除くことで手術の侵襲をコントロールし、手術を円滑に行えるようにするために、手術する部位または体全体を動かないようにします。これらに必要な薬を麻酔薬といい、様々な麻酔薬を組み合わせながら麻酔を行います。また、麻酔は麻酔薬によって手術ができる状態を作り出すだけでなく、手術が終わったら元に戻せることが大前提です。
麻酔薬
手術中の麻酔に必要な薬剤を総称して、麻酔薬と呼びます。ごく一部の麻酔薬を除き、大半の麻酔薬は、交感神経という神経を遮断します。ドキドキするなど、緊張した時に起こる反応は、交感神経によるものです。麻酔薬によって交感神経が遮断されると、副交感神経という神経による反応が強くなります。血圧は低下し、眠っている時と同じような反応が起こります。
麻酔の種類
全身麻酔
全身麻酔に以外の麻酔は、総称して局所麻酔と言われます。局所麻酔にも様々な方法があります。
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