全身麻酔とは何か
全身麻酔とは、全身に麻酔薬を作用させ、鎮静・鎮痛・筋弛緩・有害反射の抑制という条件を満たすものを言います。全身麻酔薬は呼吸を抑制するため、手術中は人工呼吸管理が必要になります。名前の通り、全身麻酔は全身に作用するため、痛みを感じることなく、眠ったまま手術を終えることができます。眠ったまま手術が終わるため、多くの患者さんが全身麻酔を望みますが、いいことばかりではありません。局所麻酔に比べて麻酔を作用させる範囲が広いため、麻酔薬の副作用を始めとした合併症が起こりやすいことも事実です。
全身麻酔のメリット
- 麻酔薬を全身に作用させるため、痛みを感じることがない
- 麻酔薬によって、眠っている状態で、意識のない状態で手術を終えることができる
全身麻酔のデメリット
- 麻酔薬が全身に作用するため、血圧低下や徐脈などの循環器系の副作用の出現がより顕著になる
- 筋弛緩薬によって呼吸が停止するため、気管内挿管(きかんないそうかん)または声門上器具(せいもんじょうきぐ)を挿入し、人工呼吸を行う必要がある。
- 人工呼吸のチューブを気管に入れた場合は、術後2~3日程度、のどに痛みが残る。
- 麻酔薬によって腸の機能も弱くなるため、術後の食事再開までに時間がかかる
- 手術時間によって、尿道カテーテルを入れる必要がある
全身麻酔が用いられる主な手術
- 心臓手術
- 肺の手術
- 開腹手術
- 腹腔鏡手術
- 人工関節手術
- 脊椎手術
- 脳の手術
- 耳鼻科手術
- 口腔外科手術
全身麻酔のリスク
全身麻酔は全身に麻酔薬を作用させる必要があります。麻酔薬を作用させる範囲が広いことに加え、人工呼吸管理を必要とすることから、局所麻酔と比べて合併症のリスクは高くなります。
全身麻酔薬による影響
全身麻酔薬の作用により、血管が拡張し、血圧が下がります。重度の心臓疾患がある方は、血圧のコントロールが難しく、全身麻酔をかけられないこともあります。
人工呼吸管理による影響
全身麻酔は自分自身の呼吸を止めてしまいます。麻酔薬で呼吸を止め、口から呼吸のための器具やチューブを挿入します。この過程でトラブルが起こった場合、致命的な結果になる可能性もあります。重度の呼吸器疾患を持つ方の場合、人工呼吸管理を行うことができず、全身麻酔をかけられない場合があります。
全身麻酔導入の流れ
- 血圧計、心電図、パルスオキシメーター(血液中の酸素濃度を計測するもの)を装着します。
- 麻酔薬を投与するための点滴を入れます。
- 点滴からゆっくりと鎮痛薬を流し始めます。
- 点滴からゆっくりと鎮静薬を流し始めます。この段階で、ゆっくりと眠くなっていきます。
- だんだんと呼吸が浅くなりますが、ご自身ではこれに気づかないので、苦しさを感じることはありません。
- 患者さんが眠ったことを確認し、筋弛緩薬を投与します。喉の筋肉を柔らかくすることで、人工呼吸のためのチューブを入れやすくします。この時点で、完全に呼吸がとまります。
- 人工呼吸のためのチューブまたは器具を挿入します。
- 人工呼吸管理が問題なく行えるかどうかを確認し、全身麻酔導入が完了となります。
全身麻酔の覚まし方
- 手術が終了したら、麻酔を覚ますために麻酔薬の量を減らしていきます。
- 人工呼吸のチューブが挿入されたまま、目が覚めます。人工呼吸のチューブが入っている間は、チューブの存在によって話すことができません。
- 麻酔からしっかりと覚めていることを確認します。手を握ったり離したりすることができるか、舌を出すことができるか、深呼吸ができるか、話しかけなくても呼吸を継続して行えているかどうかなどを確認します。
- 麻酔から覚めていることが確認できたら、人工呼吸のチューブを抜く準備をします。チューブ内や口の中に溜まった分泌物を吸引します。吸引によって、何回か咳が出ます。
- 人工呼吸のチューブを抜きます。チューブは一瞬で抜け、抜ける時に咳が一回出ます。
- チューブを抜いたら、必要に応じて口の中の分泌物を再度吸引し、酸素マスクで酸素を吸って頂きます。
- チューブ無しでの呼吸状態に問題がないことを確認し、問題なければ手術室を退室します。
まとめ
- 麻酔薬を全身に作用させるため、麻酔薬の副作用である循環器系の副作用が起こりやすい
- 筋弛緩の投与によって呼吸が停止するため、人工呼吸のチューブを留置する必要がある。
- 全身に麻酔薬を作用させるため、意識がない状態で手術を終えることができる
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