2016年7月25日月曜日

手術前の絶飲食について

手術をするにあたって、手術前の一定期間、食べ物や飲み物を摂取しない絶飲食を行う必要があります。絶飲食というのは短時間でもつらいものです。食べる、飲むという普段何気なく行っている行為だからこそ、禁止されるとつらく感じます。不必要な長時間の絶飲食は脱水や栄養状態の低下を招くため、必要最低限で行う必要があります。食べ物というのは、胃に入ってから2〜3時間で十二指腸に移動し始めます。水分はそのほとんどが2時間で胃を通過し、食べ物は約6時間で胃を通過します。ほとんどの場合、手術における絶飲食には、以下のようなASA(米国麻酔学会)のガイドラインが用いられます。


  1. 清透飲料(水、お茶、果肉の入っていないジュース、ブラックコーヒーなど)は、手術の2時間前までに中止する。
  2. 母乳の摂取は4時間前までに中止する。
  3. 粉ミルクは6時間前までに中止する。
  4. 固形物(食事)は手術の6時間前までに中止する。など脂肪分が多いものを摂取した場合は、8時間以上の絶食が必要。

絶飲食が必要な理由

絶飲食が必要な理由は、麻酔に伴う誤嚥性肺炎を予防するためです。

誤嚥性肺炎とは何か

誤嚥とは、唾液や胃液などの分泌物、胃や腸の内容物が気管に流れ込んでしまうことであり、これを契機として起こる肺炎を誤嚥性肺炎と言います。胃の内容物の流入による誤嚥性肺炎は急性の肺障害であり、重症化しやすく、死に至る場合もあります。

麻酔中には誤嚥が起こりやすい

意識がある場合、気管に胃の内容物が入ってしまっても、むせて誤嚥を予防することができます。ところが全身麻酔では、全身麻酔薬や筋弛緩薬によって「むせる」という反射が抑制されるため、胃の内容物が逆流した場合に、肺の中に流入しやすくなります。

絶飲食が必要な手術

全身麻酔で行う手術では、必ず絶飲食が必要になります。また、区域麻酔は全身麻酔に移行することもあるため、全身麻酔と同じように絶飲食を行うことが多いです。

まとめ

  • 麻酔に伴う誤嚥性肺炎を防ぐために、絶飲食は必須です
  • 手術や麻酔に伴う誤嚥性肺炎は重症化しやすく、死に至る場合もあります
  • 全身麻酔は誤嚥を防ぐための反射を抑制するため、誤嚥が起こりやすくなります
  • 絶飲食が必要なのは、全身麻酔のや全身麻酔に移行する可能性がある場合です

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